【ペルソナとは?】作る意味は?使い方は?具体的にはどうするの?

事業者が新たに顧客拡大・販売拡大を狙う際にはさまざまなプロモーション施策を実行することが考えられます。その際に、出発点となるのが「ペルソナ」です。この「ペルソナ」とは何でしょうか?


ペルソナとは、結論から言うと「自社の製品・サービスを “間違いなく” 購入・利用する具体的なお客様の人物像」捉えると良いです。なぜ作るのか?具体的にはどう生かすのか?順を追って解説します。

ペルソナが重要である理由

一般的に言われている意味

事業者が新たに顧客拡大・販売拡大を狙う際にはさまざまなプロモーション施策を実行することが考えられます。その際に、出発点となるのが「ペルソナ」です。


まずはペルソナを作ることから・・・そんなことをよく耳にしないでしょうか?



では、ペルソナとは何でしょうか?


ビジネスにおける「ペルソナ」とは、一般に「自社の製品・サービスにとって、最も重要で象徴的・典型的なお客様像」と言われています。



なぜペルソナが重要か?

自社の製品・サービスの「ターゲット顧客」を例えば「30代、女性、中流階級」等のように表現することがあります。


しかし、このレベルではまだ具体性に乏しく、プロモーションを行う上でのメッセージングがぼんやりしてしまいます



結果として、獲得したいお客様に対していくらプロモーション施策を実施してもなかなか響きません。


そこで、具体的なお客様像を ”たった1人” 想定しながら人物像を書き表していくのが「ペルソナ」です

想定する顧客を敢えて最大限 絞り込むことで「エッジの効いた」「お客様が共感する」効果的なメッセージを作り出し、プロモーション施策の効果を最大化することが期待できます。


これがペルソナが重要である理由です。


ペルソナが重要である理由

想定する顧客を敢えて最大限 絞り込むことで「エッジの効いた」「お客様が共感する」効果的なメッセージを作り出し、プロモーション施策の効果を最大化することが期待できるため



『キャズム』でもこう言われている

ハイテク業界のバイブル」として、特に新規事業を担うマーケター、ビジネスパーソンの方はキャズム(ジェフリー・ムーア著、翔泳社)をお読みになった方も多いかと思います。


この中でも
ペルソナに関連する有益な示唆があります。


まずは「キャズム」について簡単に触れておきます。

イノベーター理論

「キャズム」はエベレット・ロジャースの「イノベーター理論」をベースとしています。


この中では、
新製品の普及の進み方について、その採用段階に応じて顧客特性を5つに分けられています。

①「イノベーター(革新者)」・・・ 新しいもの好き

②「アーリーアダプター(初期採用者)」・・・ オピニオンリーダー

③「アーリーマジョリティ(前期追随者)」・・・ 新しいものには慎重だが、比較的、早くに反応する

④「レイトマジョリティ(後期追随者)」・・・ 新しいものに対し懐疑的

⑤「ラガード(遅滞者)」・・・ 最後まで頑なに反応しない



「キャズム(溝)」を超えて普及段階に入るためには?

「キャズム」では、コンピュータ製品などのハイテク市場において「アーリーアダプター」と「アーリーマジョリティー」との間には、大きな「溝(キャズム)」があり、この「溝」を超えることで新規事業の市場は本格的に拡大・普及するメインストリーム市場に突入する)、とされています。

キャズム



そして、「キャズム」を超えるためには、アーリーマジョリティー内にある特定の顧客層(ニッチ市場をターゲットとして確実に狙い落し、その実績を持ってメインストリーム市場の新たな顧客層を狙っていくべきだ、と説かれています。


キャズムから得られるペルソナに関する示唆

そして、この具体的な「ターゲット選定」に関し、「ペルソナ」という言い方では表現されていませんが、関連した重要な示唆が挙げられています。

最初に、これから検討するのはターゲット・マーケットの特徴づけではないという点に注意していただきたい。(中略)間違えてはいけない。焦点を当てるのは、ターゲット・カスタマーなのだ。マーケットというのは人格をもたず、抽象的な存在である。(中略)マーケットの名前を耳にしても、またその説明を聞いても、何ひとつイメージは湧いてこない。その理由は、マーケットの名前も説明も人の直観を呼び起こさないからである。わたしたちが必要としているのは、もっと明確な手がかりであり、もっと現実の人間を感じさせるものなのだ。

出典:「キャズム」P151、ジェフリー・ムーア著、翔泳社



新規事業を開拓するうえでは、はじめに「現実の人間」を感じさせるようなターゲット設定が必要、ということですね。これはまさに「ペルソナ」と同義であると考えられます。


「キャズム」
ハイテク市場を想定しているものですが、一般的に言っても新しいものに反応するお客様に増やす=新規顧客開拓と考えることができ、必ず押さえておくべき知識であると思います。


新規事業の拡大に必要なこと

より絞り込んだ具体的なターゲット(現実の人間」を感じさせるようなターゲット = ペルソナ)を設定して確実に市場を形成したうえで、それを拡大していくというステップを取る



【私の解釈】ペルソナが重要である理由のまとめ

これらをふまえ、筆者は「ペルソナ」とは「自社の製品・サービスを “間違いなく” 購入・利用する具体的なお客様の人物像」だと考えています。


もっと端的に言えば、「既に購入・利用した具体的なお客様」と言っても良いかもしれません。1人でもお客様がついていれば、まずはこの人物を「ペルソナ」として描いて、ブラッシュアップしていくのが良いと考えています。


そこには購入・利用する「理由」があるのだからーーー。

具体的なペルソナ作成の進め方

ここからは、具体的なペルソナ作成の方法について、2つの大事なポイントからご紹介します。

①「切実なニーズ」を表現する

ペルソナの作り方は複数挙げられますが、既にお客様を抱えている場合には、その人物を一部匿名化・加工しつつも、極力忠実に表現することが求められます。


ポイントは、対象とする製品・サービスをなぜ購入・利用したのか、その「切実なニーズ」は何であるのか?という点の掘り下げです。



ここで「切実なニーズ」とは、「must(なくてはならない)」ものであり、「nice to have(あったら良い)」ではないという点をしっかりと押さえておきましょう。


例として、女性のショートカットヘアを売りにして新規顧客開拓を行いたい美容室Aの場合を想定してみましょう。


1人のお客様に当店を選んだ理由を伺うことで、

・出産して忙しくなった

・ヘアスタイルのセットに時間をかけていられなくなった

・一方で、ママ友と会う機会が増え、仕事にも復帰したため、身だしなみはいままで以上に大事

・美容室に行く時くらいはのんびりしたい(自分時間でありたい)



といった「切実な理由」が引き出せると思います。

このためには、既存のお客様に対し「なぜ、当社の製品・サービスを購入・利用したのか?」について、アンケートやインタビューを行うことが有効です。


お客様が本質的な価値と捉えた意外な観点が導き出せる可能性があります。


是非とも実施したいところです。


ペルソナ作成のポイント

既存のお客様に対し「なぜ、当社の製品・サービスを購入・利用したのか?」について、アンケートやインタビューを行い、その「切実なニーズ」は何であるのか?を掘り下げる



②「自社の製品・サービスを購入・利用する理由」にまったく関係のないものは省略する

先ほど挙げた「切実なニーズ」をもとに、美容室A店におけるペルソナ例を作成してみました。

 


ポイントは、「自社の製品・サービスを購入・利用する理由」にまったく関係のないものは省略する、という点です。


よく、ペルソナの作成例として事細かにプロフィールや属性を記載しているものを見かけますが、「だから何?」「これをどう使うの?」といった声に押され、せっかく作ったペルソナが利用されることなく消えていってしまうことになります・・・。


顧客が1人もいない場合はどうするか?

完全な新規事業のような、まだお客様を1人も獲得できていない場合には、どうしたら良いでしょうか?


この場合、まだ「答え」がないわけですから、市場調査や仮説設計等を通じていったん仮のペルソナを作成したうえで、お客様への紹介、ヒアリングなどのテストマーケティングを通じてこれらをブラッシュアップしていくことが考えられます。


ペルソナを設定してから見直しをしていない、ペルソナを理想像にしてしまう、といったことは失敗パターンとして挙げられます。


まずは作成してみて、お客様の生の声を聴いて磨き上げましょう。


ペルソナの使い方

このようにして作り上げたペルソナは、具体的にどのように活用するのでしょうか?


大きく分けて、「製品・サービス企画への反映」と「メディアを活用したプロモーションへの反映」が挙げられます。

①製品・サービス企画への反映

ここでは、自社の製品・サービスそのものの仕様や提供方法を作り出すために利用します。


製品やサービスを企画・開発する段階においては、限られた投資・費用の中で何を優先すべきかの判断が必要です。


その時に役立つのがペルソナです。


ペルソナにとって使いやすい仕様やユーザーインタフェースを生み出したり、ペルソナが求める周辺サービスなどを優先順位付けして、企画・開発していきます。


逆に、ペルソナが必要としない機能や付帯サービスは、例えこだわりがあってもバッサリと切り捨て、顧客拡大の状況を見ながら第2ステップ以降で盛り込んでいきます。


②メディアを活用したプロモーションへの反映

もう1つの活用法として、メディアを活用したプロモーション、具体的には自社WebサイトやSNSなどにおけるメッセージング、キーワード、コンテンツへの反映があります。


この段階では製品・サービスが出来上がっており、これをターゲット顧客に正しく届けるための情報発信が必要です。


このために、自社のWebサイトやSNSなどを制作する際に、「ペルソナに届けるつもりで」キーワードやメッセージ、さらには役立つコンテンツを作り出していきます。


重要なことは、自社の目線・言葉ではなく、ペルソナの目線から検索したくなる言葉で表現していくことです。


例えば、自社の
製品名などを盛りだくさんにするのではなく、ペルソナにとっての悩みや欲求を表す具体的なキーワード、コンテンツを盛り込みましょう。


自社のWebサイトのトップページ(ファーストビュー)、検索結果画面、発信コンテンツなどに、ペルソナを意識したメッセージングが表現されているかどうかを確認し、十分でない場合にはこれらを反映していく必要があります。


まずは確認してみましょう。



まとめ

・ペルソナとは、自社の製品・サービスを間違いなく購入・利用する具体的なお客様の人物像のこと

・具体的に実在するお客様 ”たった1人” を想定しながら人物像を書き表していく


・想定する顧客を敢えて最大限 絞り込むことで「エッジの効いた」「お客様が共感する」効果的なメッセージを作り出し、プロモーション施策の効果を最大化することが期待できる

・既存のお客様へのアンケートやインタビューなどを通じ、「切実なニーズ」を表現していく

・作成したペルソナをもとに、製品企画やプロモーションに反映させる

・例えばWebサイトでは、ペルソナに関わるキーワードや有益なコンテンツをペルソナ目線で盛り込んでいく

・よくある失敗パターン: ペルソナを設定してから見直しをしていない、ペルソナを理想像にしてしまう