バリュープロポジションキャンバスで「価値」を伝えよう!
社長!御社が提供する製品・サービスの価値は何ですか?どのように表現できますか? ーーー と聞かれたら、ちょっと困ったりしませんか?改めて、自社製品・サービスの提供価値を考える良い方法はあるでしょうか?
結論として、自社の製品・サービスの提供価値を考える良い方法の1つに「バリュープロポジションキャンバス」があります。
「バリュープロポジションキャンバス」とは?その必要性とともに解説
「提供価値」を言葉で明確化すべき理由
突然ですが、貴社が提供する製品・サービスは何でしょうか?
その答えとして、製品名・サービス名やその分類・カテゴリなどが表現されるかもしれません。
例えば・・・
・食品スーパー
・Webコンサルタント
・美容室
・会計ソフト
・超小型ネジ
などなど
しかし、多くの製品・サービスは世の中に溢れており、競合企業や代替品などとの競争にさらされています。
もしくは、新規事業の場合は、製品名やサービス名などを挙げても見込み顧客にまったく伝わらないことも考えられます。
では、どのように表現すべきでしょうか?
その答えは、「提供価値」で表現することです。
では、そのための有益な方法とはどんなものがあるでしょうか?
バリュープロポジションキャンバス
自社の提供する製品・サービスの価値を明確にして、見込み顧客に届けるための手法として「バリュープロポジションキャンバス」が挙げられます。
具体的には、下記のようなテンプレートを利用しながら、製品名やサービス名だけでは表現しきれない本質的な提供価値を明らかにします。
顧客の喜びを増やす、もしくは顧客の悩みを軽減させる、これを分けて書いていくことで、提供価値をより明確にすることができます。
バリュープロポジションキャンバス
バリュープロポジションキャンバスの具体的な作成方法
ここからは、バリュープロポジションキャンバスの作成方法について、3つの大事なポイントからご紹介します。
①「ターゲット顧客」は「ペルソナ」で考える
一般的には、図の右側で「ターゲット顧客」を、左側で「自社の提供価値」を表現していくとされています。
この中で、「顧客」に関してはもう少し踏み込んで、より具体的なターゲットとなる人物像である「ペルソナ顧客」を表現することが重要です。
ペルソナについては、この記事(【ペルソナとは?】作る意味は?使い方は?具体的にはどうするの? | Marketing-Room)をご参考いただきたいのですが、簡単に抜粋します。
ペルソナとは
・ペルソナとは、自社の製品・サービスを間違いなく購入・利用する具体的なお客様の人物像のこと
・具体的に実在するお客様 ”たった1人” を想定しながら人物像を書き表していく
・想定する顧客を敢えて最大限 絞り込むことで「エッジの効いた」「お客様が共感する」効果的なメッセージを作り出し、プロモーション施策の効果を最大化することが期待できる
ペルソナを設定することにより、相対する左側の「自社の提供価値」をより具体的に明確化していくことが可能となります。
結果として、競合や代替品との差異化ポイントを明らかにすることにもつながります。
②「顕在的なニーズ」と「潜在的なニーズ」で考える
ニーズとはどのようなものでしょうか?
例えば、1人暮らしの高齢男性が「スマートフォンが欲しい」と言ったとします。
求められるものは「スマートフォン」でしょうか?
実際は、「話し相手」かも知れませんし、「趣味」かもしれません。ひょっとしたら、「若者にバカにされたくない」という想いかもしれません。
この場合、本当のニーズを「スマートフォンが欲しい」ことであると捉えるのは早計でしょう。
同様に、企業にとっての見込み顧客がWebサイトを検索する場面を想定します。
この場合、例えば「●●したい」「●●が欲しい」という「顕在的なニーズ」に限らず、例えば「時間やお金がない中、どうにか自分のこだわりのファッションを手放したくない」といった、悩みに対する手段が明確になっていない「潜在的なニーズ」であるケースもあります。
このように、ペルソナ顧客の本質的な課題を掘り下げて、自社ではなくペルソナ顧客の視点・言葉で考えることが重要です。
この「潜在的ニーズ」を見出していくうえでは、マーケティングの世界で最も有名な思考法の1つとして挙げられるものとして「マーケティング・マイオピア」があります。詳しくは「【ビジネスがしんどい時】「マーケティング・マイオピア」を思い出そう | Marketing-Room」を参照ください。
③自社の提供価値も多角的に捉える
「提供価値」といった場合に、製品やサービスの機能そのものばかりに目が行きがちですが、利用シーンでのメリットや不便利さの解消なども含め多角的に捉えていきましょう。
これにあたり、参考となる2つのフレームワークをご紹介します。
3つの製品モデル(コトラー)
まずはマーケティングの大家、フィリップ・コトラーの3つの製品モデル(「プロダクト3層モデル」)です。
コトラーは、「製品やサービスは少なくとも3つのレベルで考えなくてはならない」と述べています。
この3つのレベルとは、以下のものです。
・第1のレベル: 中核となる顧客価値
・第2のレベル: 実態製品(製品そのもの、その特徴、デザイン、パッケージ、品質水準、ブランド名など)
・第3のレベル: 拡張製品(付加的なサービスやベネフィット)
3つの製品モデル(プロダクト3層モデル)
製品・サービスの価値と言った場合に、無意識的に「実態製品」の部分ばかりを考えてしまいます。
これに対し、まずは顧客が求めているベネフィット(=ありたい姿、求める状態)は何か(第1のレベル)を捉えることが重要です。
また、製品そのものだけでなく、例えば購入後のアフターサービスのきめ細かさや支払い方法の多様性など、付加的なサービス(第3のレベル、拡張製品)が大きな差異化要因となるケースがよくあります。
”自社製品は、他社製品と基本的な機能は変わりません。しかし、利用方法について小学生でも分かる動画を多数用意しており、上級者には無料電話相談をご利用いただけます”
このようなことも十分な提供価値として挙げられます。
ホールプロダクト
「ホールプロダクト」は、マーケティング・マイオピアで有名なセオドア・レビットが提唱したものですが、「ハイテク業界のバイブル」として、特に新規事業を担うマーケター、ビジネスパーソンにとっての必読書である「キャズム」の中でも、その重要性が挙げられています。
基本的な考え方は、コトラーのプロダクト3層モデルと同じです。
製品・サービスを本格的に普及させるためは、それらの価値を最大化する他の製品・サービス(場合によっては協業や提携なども含め)により、顧客の要求を完全に満たす製品、つまり「ホールプロダクト」を構築する必要があると述べています。
ホールプロダクト(「キャズム」より)
重要なこととして、「キャズム」では、新製品・サービスが本格的な普及段階に入る「メインストリーム市場」に突入するためには、その市場の顧客特性を理解する必要があると述べています。
具体的には、新事業の本格的な普及期に対象とする顧客(アーリーマジョリティー、と言われています)は、その手前までの「新しいもの好き」や「オピニオンリーダー」のような顧客と違い、製品・サービス利用による満足度を高めるような工夫や努力を自ら行うことはない、ということです。
よって、「ホールプロダクト」に挙げられているように、製品・サービスそのもの(コアプロダクト)以上にその満足度を最大化するような付帯的なサービス(場合によっては他社のもの)も含めて用意する必要があるのです。
逆に言うと、この「利用」の部分に着目して、使いやすさを向上したり不便利さを解消することは、大きな価値につながります。
バリュープロポジションキャンバスで明確化した「提供価値」はどう反映するか?
バリュープロポジションキャンバスを用いて自社製品・サービスの提供価値を明確化したら、それは具体的にどのように反映させるのでしょうか?
大きく分けて、「製品・サービス開発への盛り込み(マーケティング4P戦略の “Product”)」と「プロモーション戦略への反映(マーケティング4P戦略の “Promotion”)」が挙げられます。
①製品・サービス開発へ盛り込み(マーケティング4P戦略の “Product”)
まずは、自社の製品・サービスの仕様や提供方法を最適化するために利用します。
この場合、先に挙げたように、製品・サービスの機能や実態そのものだけでなく、付帯的なサービス(使いやすさ、サポート、支払い方法の多様性など)も含めて自社の強みとする部分を作りこみます。
ポイントは、ペルソナを思い切って絞り込み、明確化するです。
自社のペルソナ顧客にとって使いやすい仕様やユーザーインタフェースを生み出したり、ペルソナが求める周辺サービスなどを優先順位付けして、企画・開発していきます。
ペルソナを絞り込むことで、限られた費用と期間の中で自社の強みとなる提供価値やこれを具体化するサービスを有効なものとすることができます。
②プロモーション戦略への反映(マーケティング4P戦略の “Promotion”)
もう1つは、明確化した自社製品・サービスの提供価値をプロモーション戦略に反映させていきます。
具体的には、自社WebサイトやSNSなどにおけるメッセージング、キーワード、コンテンツへの反映していくことです。
自社のWebサイトやSNSなどを制作する際に、「ペルソナに、明確化した自社の提供価値を届けるつもりで」キーワードやメッセージ、さらには役立つコンテンツを作り出していきます。
この場合、自社の目線・言葉ではなく、ペルソナの目線から検索したくなる言葉で提供価値を表現していくことが重要です。
ペルソナにとっての悩みや欲求に対し、バリュープロポジションキャンバスを用いて明確化した自社の提供価値を具体的なキーワード、コンテンツを通じて盛り込みます。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
以上のような方法で、自社の製品・サービスの価値を改めて明確化することができます。
価値あるすべてのものが正しく輝くための戦略、それがマーケティングであり、その「価値」を明確化・最適化する方法として「バリュープロポジションキャンバス」をご紹介しました。
提供価値を表す際のポイント
・自社の製品・サービスの提供価値を考える良い方法の1つに「バリュープロポジションキャンバス」がある
・顧客ニーズを「顕在的ニーズ」と「潜在的ニーズ」に分け、提供価値を考える
・提供価値は、製品・サービスの機能や実態そのものだけでなく、利用シーンでのメリットや不便利さの解消なども含め、多角的に捉えていく
・いずれも、顧客(ペルソナ顧客)の視点・顧客の言葉で考え表現する